学輪IIDA ~地域と大学をむすぶ新しいカタチ~

 今年の夏も、多くの大学が、飯田を「学びの場」として訪れました。

 また、飯田市が実施している「南信州・飯田フィールドスタディ」にも、多くの大学生達にご参加いただきました。

 飯田をフィールドに、様々な大学が地域と連携しながら学習・調査活動を展開することは、地域にとっても価値ある取組と認識しています。

 今回は、飯田市の大学連携取組や、飯田市と連携しながら実践された各大学の調査実習等の概要について、学輪IIDAの事務局よりいくつか紹介させていただきます。

 ※飯田市の担当者から見た紹介文書です。事実誤認や補足等ございましたら、各大学より発信いただければ幸いです。

 ※本来であればその都度掲載できれば良いのですが、事後報告の形になり申し訳ございません。

  各大学の皆様も、この学輪IIDAのウェブサイトを通じて、活動の様子等取組をご紹介いただければ幸いです。

 

【南信州・飯田フィールドスタディの実施】

 今年度の南信州・飯田フィールドスタディを、第1回目を8月9日(土)から12日(月)に、第2回目を8月25日(日)~28日(水)に、それぞれ3泊4日の日程で開催致しました。

 南信州・飯田フィールドスタディは、定住自立圏や環境モデル都市の取組などこの地域の先進的な取組や、様々な分野における多様な主体による協働の取組について大学生等に学んでいただくプログラムです。

 今年の夏は、例年以上の猛暑に見舞われ、大変暑い中でのフィールドスタディとなりましたが、牧野市長による当地域における地域政策に関する講義をはじめ、住民自治や公民館活動、環境、産業、文化活動といった分野における様々な取組について、地域住民を講師とした学習会や農家民泊や体験活動を通じた地域住民との交流を通じて学習いただきました。

 なお、第1回目のフィールドスタディでは、これまでのフィールドスタディのほかに、「環境」をテーマにしたフィールドスタディを立命館大学、立命館アジア太平洋大学、名城大学の3大学の連携のもと実施しました。  (学輪IIDA共通カリキュラムプロジェクトとして実施)

 各フィールドスタディの最終日には「飯田への提言」として、今回の学習を踏まえて参加学生が感じた飯田の魅力や課題、それに対する対応策などについて報告・発表いただきました。

 今年度は、2回のフィールドスタディを通じて13大学、約160名の大学教員や学生に参加いただきました。

 今回の飯田での様々な経験が、今後の学生の皆さんの取組や学習活動の糧になれば幸いです。

  

  

【飯田をフィールドとした大学の取組事例の紹介】

東京農工大学:地域社会システム調査実習 

 東京農工大学農学部地域生態システム学科による「地域社会システム調査実習」(担当教諭:土屋俊幸教授・朝岡幸彦教授・榎本弘行講師など)が、第1回(6月29日~30日)、第2回(8月3日~7日)にかけ実施されました。

 同校による調査実習は、平成23年度以来3年連続の取組になります。今年度は、事前に大学の授業において飯田市に関する学習や調査内容等について検討され、調査実習には学部生、TA、教員合せ34名の皆さんが参加されました。

 第1回目の学習会は、牧野市長による地域政策に関する講義のほか、高松いいだ人形劇フェスタ実行委員会による人形劇フェスタの取組、農家民泊、遠山地域(上村・南信濃)の地域づくり等について現地学習を行いました。

 第2回目は、街づくり班、村づくり班の2グループに分かれ、調査活動を展開されました。まちづくり班は、いいだ人形劇フェスタのボランティアスタッフを体験しつつ、まちづくりに関わる様々な団体や行政職員等を対象に聞き取り調査を行いました。村づくり班は、遠山地域における地域づくりの実践者達や、若者達への聞き取り調査を行いました。

豊橋技術科学大学:シャレット・ワークショップ

  豊橋技術科学大学飯田サテライト・ラボの活用の一環として、建築・都市システム学系による「飯田を知ろうプロジェクト」と「シャレット・ワークショップ」(担当教諭:大貝 彰教授・浅野純一郎准教授・谷武助教など)が実施されました。

  同校による学習・調査活動は、平成22年度に市内に「飯田サテライト・ラボ」を設置以降、継続的に実施されており、地域と連携しながら高専教育と連続する学部・大学院の一貫した実践的技術者育成教育を展開されています。

シャレット・ワークショップの事前学習として実施された、飯田を知ろうプロジェクト(7月12日~13日)では、豊橋技術科学大学、長野高専、豊田高専、熊本高専の学生12名と教員が、飯田市橋北地区と竜丘時又地区の概要について、地域住民とともに学習しました。

  シャレット・ワークショップ(8月16日~20日)では、豊橋技術科学大学、長野高専、豊田高専、徳山高専、熊本高専の学生約30名と教員が、橋北地区まちづくり委員会の取組や意向を踏まえ、街歩き調査や地元住民との意見交換を通して当該エリアの歴史的文脈を読み解きつつ、菱田春草生誕地記念公園の整備並びに橋北地区の歴史・生活資源(旧測候所、喜久水酒造酒蔵、その他大正時代の建築物など)を活かした回遊ネットワークと拠点の整備について、学習するとともに、その具体的な活用案について地域へ提案いただきました。

法政大学経済学部:西澤ゼミナールによる調査実習

 法政大学経済学部西澤ゼミナール(担当教諭:西澤栄一郎教授)による、飯田市の竹林の現状や資源化に向けた取組等に関する現地調査が、8月19日から22日にかけ実施されました。

 22名の学生と教員が参加された現地調査では、竹林の現状に関する所有者への聞き取り調査や、竹炭、竹チップ、竹粉といった再資源化の取組に関する調査、実際に竹林に赴いての整備体験等が行われました。

 最終日には、聞き取り調査先や担当の職員を対象とした報告会が開催され、学生の視点から見た課題や課題への対応策等について提案いただきました。

和歌山大学観光学部:藤田研究室による調査実習

 和歌山大学観光学部藤田研究室(担当教諭:藤田武弘教授)による、飯田市千代地区における調査実習が、8月21日から23日にかけ実施されました。

 都市と農村との交流等を通じた農村再生や、地域の観光資源等を活かした地域振興について、今後地域と藤田研究室が連携しながら取り組んでいくための事前学習として実施されたこの度の調査実習では、千代地区の概要に関する学習、まちづくり委員会や地域づくりの実践者達への聞き取り調査や意見交換会、ワーキングホリデーに関する行政担当者への聞き取り調査等が実施されました。

 藤田研究室では、ワーキングホリデーの取組に関する農家への聞き取り調査を、11月に実施する予定です。

法政大学国際文化学部:SJ国内研修

 法政大学国際文化学部(担当教諭:高柳俊男教授・曽士才教授など)による、留学生を対象にしたSJ国内研修を、9月3日から9月10日にかけ実施されました。

 SJ国内研修は、飯田・下伊那地域の歴史・社会・文化・まちづくりなどについて学習することで、地方都市における国際化や異民族との関係性等について理解を深めるものです。

 現地学習では、飯田市の概要や多文化共生社会に向けた取組、飯田市公民館や歴史研究所の活動、満蒙開拓平和記念館事業や伝統文化とその継承に関する取組などについて学習されました。

 最終日は、各学生から今回の研修に関する成果発表会(中間発表)も行われました。

法政大学酒井ゼミと京都外大高島ゼミとの共同学習

 法政大学キャリアデザイン学部酒井ゼミ(担当教諭:酒井理准教授)と、京都外国語大学外国語学部高島ゼミ(担当教諭:高島知佐子講師)との、飯田の伝統産業(水引)をテーマにした共同での調査・学習活動が、9月10日から12日にかけ実施されました。

 水引産業の育成や発信方法(ブランド化)に向け、水引業者(企業)を対象にした現状や課題に関する聞き取り調査、水引工芸体験、産業振興を担当している市職員との意見交換、市民の水引に関する認知度調査(アンケート)などを実施しました。

 今回の調査を踏まえてのアウトプット等は、今後両ゼミが相談しながら進めていく予定ですが、伝統産業の振興といった地域課題に対する、異なる大学(ゼミ)による合同での調査・学習活動は、今後の当地域における新しい大学連携のモデルになるのではと期待しているところです。

東京大学:南信州・飯田フィールドスタディ

 東京大学による南信州・飯田フィールドスタディ(担当教諭:牧野篤教授・李准教授・新藤講師)が、9月17日から20日にかけ実施されました。

 東京大学教育学部は、社会教育学演習として牧野研究室を中心に4年前より、この地域における多様な主体による協働のまちづくりの実態について、地域住民との学習・交流・実体験を通じて学習されています。

今年度も、住民自治や公民館活動、都市と農村との交流活動、いいだ人形劇フェスタやりんご並木ネットワークの取組など、市民主体による地域づくりや文化活動等について、地域づくりの実践者や地元高校生達との交流や意見交換、実体験等を通じて学習しました。

今後参加学生達は、今回の学習を踏まえ関心のあるテーマを更に深める調査実習を展開し、報告書としてまとめるとともに、飯田での調査報告会を実施する予定です。